私は少し前まで、看護師をしていた。
人に言うと
「頭いいんだね」なんて言われるけど、成績は良くて中の上くらいだった。決して「頭がいい」部類には入らないと思う
だけど、他に比べれば理科が得意だったし、なりたい職業も決まらないまま高校2年生になり、周りの友だちが何故かみんな看護学校へ行く。と言うので私も乗っかったのだ
運良く、看護学校にも受かった。授業も実習も補習、再テスト、補習の繰り返しだったが何とか無事に単位を取った。残るは、国家試験
なんとかここまで来たんだから、
私の夢。ではなかったが「受かって、看護師になりたい」と思った
前日から試験場の近くのホテルに泊まり、明日に備えた。朝が来て、クラスみんなでこわばりながら試験場へ向かった。会場に入ると、その緊張感たら、無駄口なんて絶対できない。そんな雰囲気だった
私は窓から2列目の席についた
「本当に始まるんだ」
逃げ出したいような、
やっと終わる終わりが見えたような、
今まで味わったことのない感覚だった。
「用意、開始!」
緊張の中、試験が始まった
解るような、解らないような、不思議な感覚の中。今までの勉強を思い出し、精一杯やった
すべてやり終えると、ワッと
緊張が溶けた
ちょうど日が当たりだし、温かい空気に包まれた。休もう。なんの抵抗もなく、眠りに入った
一世一代の試験の日に
私は見直しもせず、寝たのだ。
ほんとに眠っていた。
温かい空気に包まれて
いきなり肩を叩かれた、しっかりとした感覚があった
「だれ??」
周りをみると、そこは試験会場だった。
どこにいるかも分からない程、熟睡していたのだ
ハッと我に返り、時計を見る
試験終了まで、もうわずか数分だ、しまった!
あわてて、マークシートのズレがないか確認をすると、3問目でマークがズレているではないか、急いで消しゴムを取り、消し、書き直す。
その瞬間に
「終了です、鉛筆を置いて!」
と、私の国家試験は終了した。
試験が終わり、終わってしまって。何故、私はあそこで眠ったのだろう、と自分が信じられなかった。と同時に誰が起こしてくれたのか
ほんとうに、しっかりと、肩を叩かれた感覚があったのだ。
いや、でもあの会場に私を起こす人はいない。触れることすら、違反になるのではないか、と思う状況だ。あれは夢だったんだろう、私の推理はそこで終わった
半月ほどして結果が出た、国家試験、合格。
合格通知と共に、試験の点数がわかった。
看護師国家試験は二部に分かれており、必須と一般問題がある。必須は50問中40問の正解、一般は200問中だいたい6割正解していれば合格である
一般は6割の正解だが、必須は8割いる。
正解が40問を下回れば、不合格となる、
その中で、私の必須の正解は40問題ぴったりだった
あと1問、あと1問
間違っていれば、不合格だったのである。
恐怖のような、身体が縮こまるような感覚がおそう
その時、あることも同時に思い出した
あの時、
肩を叩かれなかったら、
あれは夢じゃなかったのでは、?
だれかが、
だれかって、誰?
だけど、誰かが起こしてくれた様にしか思えなくなった。だって、あのことがなければ私はここにいなかった、
旦那さんと出会うこともなかった
子ども達に会うことも。
あの苦い、甘い思い出も、
私は霊感なんてない、何を感じることもない
だけど、あれは夢にしては「できすぎている」
そう、思うんだ。
今週のお題「激レア体験」